YMS-15 ギャンとは
ギャンの概要
ギャンは、ジオン軍の「第2期主力MS開発計画」の一環としてツィマッド社によって開発された、白兵戦に特化したモビルスーツです。この機体は、MS-X10としての開発コードを持ち、特に連邦軍のMS、ガンダムとの近接戦闘を念頭に置いて設計されました。ギャンはその卓越した格闘戦能力で知られていますが、ゲルググとの比較では、ビーム・ライフルの運用ができないなどの理由で、総合的な空間戦闘能力や汎用性において劣っていたため、正式採用は見送られました。
しかし、ギャンの基本性能は非常に高く、特に運動性においてはゲルググを上回ると評価されています。その運動性の核心には、「流体パルスアクセラレーター」というシステムがあります。これは、ジェネレーターで発生した余剰エネルギーを一時的に蓄え、必要に応じて迅速に各部に伝達することで、機体のレスポンスを大幅に向上させる重要な機構です。ガンダムに匹敵する跳躍能力や、フェンシングのような素早いステップワークを可能にするためには、このシステムが不可欠でした。
ギャンのヘッドユニットは、格闘戦に特化した設計が施されており、モノアイなどの基本デバイスはグラモニカ社製の高性能ユニットを使用しています。これにより、モノアイの移動速度が向上し、後方視界もメインカメラでカバーされるなど、白兵戦における優れた視界を確保しています。
ギャンのボディユニットは、ドムやゲルググのブロック構造を踏襲しつつ、地球連邦軍製MSの設計を参考にしています。背部ランドセルは姿勢制御やブースト時の補助として機能しますが、空間戦闘能力はザクIIをわずかに上回る程度でした。
腕部モジュールは、専用ビーム・サーベルの運用に最適化されており、反応速度とトルクが極限まで強化されています。これにより、ギャンは他の同時期のモビルスーツと比較して、最も物理的な戦闘を行うためのモジュールを備えていました。刺突を重視した設計のため、腕部の伸縮レスポンスは非常に高い性能を誇っています。
正式採用は見送られたものの、ギャンの試作機はマ・クベ専用機としてカスタマイズされ、実戦での運用実績を持ちます。また、その設計思想はペズン計画のガルバルディアや後の時代のR・ジャジャなど、後続のモビルスーツにも影響を与え続けています。ギャンは、ガンダムシリーズの中でも特に白兵戦に特化したモビルスーツとして、その名を歴史に刻んでいます。
ギャンの登場作品・登場シーン・パイロットなど
機動戦士ガンダム
初出作品。第37話でマ・クベの搭乗機として登場した。試作された機体を改良した機体にマ・クベが乗り込み、テキサスコロニーにてアムロ・レイのガンダムと対峙した。トラップを活用して一時はガンダムに対して優位に立つものの、この頃のアムロはニュータイプとして覚醒しており、最後はパイロットの差に敗れている。 劇場版ではテキサスコロニーでの本機の戦闘がシャア専用ゲルググに差し替えられたため登場していない。
F.M.S.
第1回にて型式番号(MS-15)のみ登場。宇宙世紀0079年11月下旬にグラナダの突撃機動軍司令部が地上のマ・クベ師団に対し、本機を含む試作MS群や技術者の回収を命じている。そしてマッドアングラー級ズアイが輸送任務を引き受け、カタールから海路ブルネイへと輸送。連邦軍のフロッグ・ボール部隊を迎撃しつつ任務を成功させた。
機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像
マ・クベと共に『1st』劇場版設定で登場。ア・バオア・クーから脱出する際、シャアと共にゼナとミネバを載せたコムサイの護衛を務めた。最終的に連邦軍の艦砲射撃により撃墜されている。
ガンダムビルドファイターズ
第1話でサザキ・ススムが使用したガンプラ。劇中ではセイのウイングガンダムを完膚なきまでに撃破し(殆ど『蹂躙』と言っても過言無いほどに)、またビルドストライクも当初はサーベルのみで圧倒していた。しかし、操縦者がレイジに変わった事で形勢逆転。使わないと思っていたシールドミサイルやライフルを以てしても覆す事敵わず、最後にはビームサーベルで一刀両断されて敗北した。 尚、サザキはこれ以降も本機に拘り続けていたらしく、後に改造機であるギャンギャギャン、ギャンバルカンを完成させている。